日本の中小企業にとって、事業承継やM&Aは経営資源を次世代へつなぐ重要なプロセスです。しかし、すべてのM&Aが円滑に成約するわけではありません。中には、やむを得ず「廃業」を選択し、新たな事業や活動へ舵を切る経営者の方もいらっしゃいます。
そんな「再チャレンジ」を志す経営者の大きな味方となるのが、「事業承継・M&A補助金」の「廃業・再チャレンジ枠」です。本記事では、制度の概要から具体的な要件、受給額までを分かりやすく解説します。
1.廃業・再チャレンジ枠とは?制度の目的を解説
本補助金は、事業承継やM&Aをきっかけとした経営革新を支援する制度ですが、この「廃業・再チャレンジ枠」は、「既存事業を整理し、新たなチャレンジへ向かうこと」に焦点を当てています。
単なる店じまいを支援するのではなく、地域の需要や雇用を守り、経済を活性化させるための「再出発」を後押しすることが本来の目的です。M&Aが成約しなかった場合や、承継に際して一部の不採算部門を廃止する場合などが対象となります。
2.対象となるのはどんな人?2つの申請パターン
本枠には、大きく分けて「単独での申請」と「他の枠との併用申請」の2パターンがあります。
| 区分 | 概要 |
| 再チャレンジ申請 (単独) |
M&Aの成約に至らず、地域の新たな需要の創造 又は雇用の創出にも資する新たなチャレンジをする場合 |
| 他補助事業枠 との併用 |
事業承継促進枠や専門家活用枠など 他の「事業承継・M&A補助金」と同時に申請し、 承継・M&Aに伴って一部の事業を廃業する場合 |
両パターンとも、 地域経済に貢献している中小企業者等であることが求められます。例えば、地域で雇用の維持・創出し地域に貢献している、地域または近隣地域での売上や仕入れが多い中小企業などが本補助金の対象となります。
また、再チャレンジ申請(単独)の場合は、以下の要件も満たす必要があります。
- M&Aへの着手実績: 2020年以降にM&Aに着手したが成約せず、着手から6か月以上経過していること。申請者自身でM&Aに着手した場合は要件を満たしません。M&A仲介会社やM&Aマッチングサイトに登録し、着手した場合が対象となります。
- 再チャレンジの意思: 廃業後に再チャレンジする事業に関する計画を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けていること。認定経営革新等支援機関は、事業計画作成のサポートや補助金の申請をサポートする支援機関です。
3.最大150万円!補助金の金額と補助率
補助される金額は、再チャレンジ申請(単独)と他補助事業枠との併用の両パターンとも、下限50万円〜上限150万円となっています。
ただし、再チャレンジ申請(単独)の補助率は補助対象経費の3分の2であるのに対して、補助事業枠との併用の場合は、併用先の補助率が適用される場合がありますので注意が必要です。
- 再チャレンジ申請(単独)の補助率: 対象経費の3分の2以内
例:廃業に225万円の対象経費がかかった場合、その3分の2である150万円(上限額)を受給できる計算になります。
4.何に使える?対象となる5つの主な経費
再チャレンジ申請の場合は以下①のみが対象となり、他補助事業枠との併用の場合は、①又は②のいずれかが対象となります。
①会社自体を廃業するために、補助事業期間内に廃業の登記を行う、在庫処分、建物や設備を解体する、原状回復を行うための経費。
②事業の一部を廃業(事業撤退)するために、補助事業期間内に廃業登記を行う、在庫処分、建物や設備を解体する、原状回復を行うための経費。
また、具体的な経費区分は以下の通りです。
- 廃業支援費: 登記申請の司法書士報酬や、清算に係る税理士・会計士等への専門家費用(上限50万円) 。
- 在庫廃棄費: 商品在庫を専門業者に依頼して処分する費用。
- 解体費: 既存事業の建物・設備等の解体費用。
- 原状回復費: 借りていた店舗や事務所を返却する際の原状回復費用。
- リースの解約費: 廃業に伴うリースの解約金や違約金。
- 移転・移設費:効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費。他補助事業枠との併用の場合のみ可。
※いずれも、原則として2者以上の相見積が必要となる点にご留意ください。
5.申請から受給までの流れ
本補助金は以下の流れで申請します。必要な書類は多くあるため、早めのタイミングから準備を行うことを推奨します。
- GビズIDプライムのアカウントを取得する。
- 事業承継計画等の策定および履歴事項全部証明書などの必要書類を準備する。
- 認定経営革新等支援機関から事業承継計画等の確認書を取得する。認定経営革新等支援機関は、事業計画作成のサポートや補助金の申請をサポートする支援機関です。この支援機関からの確認書が必須です。
- 電子申請システム「jGrants(J グランツ)」を利用して、申請書類を提出する。
最後に
「廃業」という言葉にはどうしてもネガティブなイメージがつきまといますが、本補助金制度においては、それは決して終わりではなく、「次のステージへの前向きな整理」と捉えられています。
長年大切にしてきた事業を畳む決断は容易ではありませんが、コスト面での負担を補助金で軽減することで、経営者の皆様が心機一転、新しい一歩を力強く踏み出すためのエネルギーに変えていただきたい。本制度には、そんな期待が込められています。
「M&Aがうまくいかなかったから」と諦めてしまう前に、この「再チャレンジ」の切符を検討してみてはいかがでしょうか。
本記事は要項を要約したものです。詳細については下記のホームページをご確認ください。
